やさしい超臨界流体教室
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Q1:


超臨界流体って何ですか?

A: 物質は、温度、圧力などの環境条件により気体、液体、固体の3つの状態の間を移り変わります。図1はこれを図示したものです。気体、液体、固体の3相が共存している点を三重点といいます。三重点より温度が高くなると、液体と気体の2相が平衡になり、圧力は飽和蒸気線に沿って変化します。温度、圧力を加えても液体と気体の区別がつかなくなる終点があり、これを臨界点といいます。この臨界点を越えた温度と圧力の状態にある流体を超臨界流体といいます。
超臨界状態になった流体は、液体や気体の状態とは異なった性質を持っています。たとえば、超臨界二酸化炭素は油などに対する親和性が高く、油脂や香味成分をよく溶かします。このため、食品からこれらを抽出する際に広く使われています。
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Q2:


超臨界状態って何ですか?

A: 一般に、物質には固体、液体、気体の状態があります。周囲の温度や圧力を変化させ、気体と液体の密度が同じになり、2つの相が区別できなくなった状態を臨界状態と言います。この臨界状態を超えた温度と圧力の状態を超臨界状態といいます。
水の例ですと、大気圧下では容器が0℃より低い温度では氷(固体)と水蒸気(気体)の2相です。0.01℃、610Pa(約0.006気圧)では水(液体)と氷(固体)と水蒸気(気体)の3相になります。温度を上げていくと開放容器では水(液体)が水蒸気(気体)となって蒸発し100℃で沸騰しますが、密閉容器では温度を100℃に上げても、蒸発した水蒸気により容器内の圧力も上がるので水は沸騰しません。この状態の容器に透明な窓をつけて様子を見ると、水(液体)と水蒸気(気体)に分かれてその境目がはっきり見えます。さらに温度を上げていくと、どんどん水が蒸発して容器内の圧力が上がり水蒸気(気体)の密度が上がりますが、水(液体)は密度が小さくなってきます。このようにして、水蒸気(気体)の密度と水(液体)の密度が同じになり、水(液体)と水蒸気(気体)の境目がなくなる点(温度374.1℃、圧力22.06MPa)があります。これを臨界点と言い、物質によってその値が決まっています。表1に代表的な例を示します。
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表1 代表的な流体の臨界値
物質 臨界温度 臨界圧力 臨界密度
酸素 -118.6 ℃ 5.05 MPa 427 kg・m-3
二酸化炭素 31.0 ℃ 7.37 MPa 468 kg・m-3
アンモニア 132.4 ℃ 11.28 MPa 235 kg・m-3
メタノール 239.4 ℃ 8.10 MPa 272 kg・m-3
374.1 ℃ 22.06 MPa 322 kg・m-3



Q3:


超臨界流体の特徴は何ですか?

A: 超臨界流体は、物質を溶解するという液体的な性質と、拡散性に優れているという気体的な性質の両方の特性を兼ね備えています。超臨界状態では、温度や圧力を変えることで物質溶解性と拡散性は連続的に変化させることが出来ます。図2はこの様子を模式的に示したものです。表2は期待と液体および超臨界流体の物性を概略的に示したもので、ほぼ液体と気体の中間の値で幅広く変化していることがわかります。
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図2 液体、気体および超臨界流体の特徴



表2 液体、気体および超臨界流体の輸送物性値
物性 気体 超臨界流体 液体
密度/kg・m-3 0.6〜2 200〜900 1000
粘度/Ps・s 10-5 10-4〜10-5 10-3
拡散係数/m2・s-1 10-5 10-7〜10-8 10-9
熱伝導度/W・m-1・K-1 10-3 10-1〜10-3 10-1



Q4:


どんな超臨界流体がありますか?

A: 物質はすべて超臨界流体になります。身近なところでは水や二酸化炭素が超臨界流体として広く利用されています。



Q5:


超臨界二酸化炭素はどのように利用されていますか?

A: 二酸化炭素は地球上に広く存在し、人体に対して無害なため広く利用されています。また、無極性分子なので、ヘキサン等の有機溶媒と同じように油脂類を良く溶かします。もちろん、二酸化炭素は分子量が小さいため、分子量のおおきな溶質への溶解力は小さく、溶媒として利用するためには超臨界状態にしなければならないのですが、毒性や引火性がないことや、超臨界流体の特性を利用することで有機溶媒では困難な操作を行なうことができるため、いろいろな応用が考えられています。工業的にはコーヒー豆からのカフェイン除去に利用されたのを始めとして、他に以下のような応用例があります。
分離・抽出(香料、色素、不飽和脂肪酸、医療品)、
超臨界乾燥、
超臨界洗浄、
超臨界染色、
マイクロ発泡、
微粒子製造、
有機合成反応(有機化学反応、
触媒反応、酵素反応、ミセル反応、重合反応等)、
超臨界塗装、
殺菌、
分析



Q6:


超臨界水はどのように利用されていますか?

A: 水は二酸化炭素と共に地球上に広く存在し、人体の構成物質でもあることから広く利用されています。また、水は塩などの電解質や砂糖などの有極性有機物質を溶かしますが、気体や無極性有機物質の油脂などはほとんど溶かしません。 しかし、温度が上がると水分子の熱運動によりこれらの性質は大きく変化し、超臨界水は種々の気体や無極性有機物質を完全に溶かすようになります。このような溶解性の大きな変化を利用して、工業的には次のような利用が考えられています。

◎超臨界水酸化
超臨界水の領域は、多くの有機物の熱分解反応が起こる温度領域にあります。さらに酸素を容易に溶解し均一相を作るため、この酸化力を利用した有害物質や難分解性有機物の分解・無害化処理に応用されています。
この処理の特徴として、1)自然界に多量に存在し無害である水を使う。2)数分以下の極めて短時間で分解が終了する。3)最終分解生成物が水、二酸化炭素、無機塩などで安全性が高い。4)処理がクローズドシステムで行なえるため二次汚染がない、などがあげられます。
検討された具体的として
・焼却飛灰中のダイオキシン類、PCB、フロン類の分解
・薬品廃液、半導体廃液(TMAH)等の分解
・固形低品位燃料(褐炭等)燃焼によるエネルギー回収
などがあります。

◎超臨界水抽出(油化・ガス化)
超臨界水でバイオマスを処理すると、急速な熱分解により油化やガス化がおこります。バイオマスはカーボンニュートラルであるため、これからのエネルギー源のひとつとして注目されています。一般にバイオマスは水分も多く発熱量も低いため、通常の熱分解処理は困難ですが、超臨界水を使うことで、迅速かつ効率的な処理が可能です。
バイオマスとしては、
・間伐木材、セルロース、家畜糞尿、下水汚泥、醸造廃棄物
などが検討され、メタン、二酸化炭素、一酸化炭素などが回収されています。
また、超臨界水によるオイルサンドや重質油等の改質と脱硫プロセスへの適用も取り組まれています。同様に廃プラスチックの処理として、付加重合系ポリマーであるポリエチレンやポリプロピレンを分解すると、直鎖炭化水素、飽和・不飽和炭化水素、芳香族炭化水素などの油分を得られることが確認されています。また廃タイヤのゴムからの油分回収も試みられています。これらは超臨界水分解後、気液分離器で生成ガスと生成油・水に分離され、さらに生成油と水は油水分離器で簡単に分離・回収することができます。

◎ポリマーのケミカルリサイクル
ポリマーのリサイクルには、焼却する際の熱エネルギーを回収するサーマルリサイクル、回収したポリマーを再溶解により繊維化するなど物理的にリサイクルするマテリアルリサイクル、回収したポリマーを化学的に分解して元の原料として再利用するケミカルリサイクルがあります。
縮重合系ポリマーであるポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン、ナイロン、ポリカーボネートなどは、超臨界水で容易に加水分解してモノマーとして回収することができます。テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)がエステル結合で重合したPETでは、処理温度や処理時間を選択することで、原料であるTPAやEGが高収率で回収でき、ランニングコストにおいても十分な経済性があることが確認されています。また、ナイロンについても、モノマーのε−カプロラクタムへの分解には、通常は反応を促進するための酸触媒の添加が不可欠ですが、超臨界水はイオン積の増加により水素イオンと水酸イオンに解離して、水自身が酸触媒となって反応を加速するため触媒不要のプロセスが実現できます。

◎超臨界水有機合成
超臨界水を反応場とした有機合成反応の例は極めて少ないのですが、水は臨界点近傍では水素結合が著しく減少するため、プロトンの生成や酸触媒機能の発現の可能性が明らかになってきました。実験的にも超臨界水中でシクロヘキサノンオキシムからε−カプロラクタムの合成が無触媒できることから、ベックマン転移反応が起こっていると考えられています。これはナイロンが新しい合成法でできることを示しています。この他にもピナコール転移反応が効率的に進行することが確認され、今後超臨界水が反応場として、また触媒や反応基質として利用できる可能性が出てきています。

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